大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)5480号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕ところで、原告は、時効期間の起算点として、右大久保治男の占有開始のときである昭和二二年頃を主張せず、本訴提起の日である昭和四一年六月一五日から一〇年前である昭和三一年六月一五日をその起算点として主張するので、時効援用者において時効期間の起算点を任意に選択できるものか否かが問題となる。

時効の基礎となる事実の開始されたのち、登記名義に変更のある場合は、単に時効の当事者間の問題にとどまらず、第三者に対する対抗問題を生ずるから、時効援用者に時効期間の起算点を任意に選択することを許せば、占有者に登記なくしてすべての第三者に対する対抗を許す結果となることがありうるから、右の場合、時効期間は、時効の基礎となる事実の開始された時を起算点として計算すべきであり、時効援用者において起算点を任意に選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることは許されないと解すべきである。しかし、時効の基礎となる事実が開始されたのち、登記名義に変更のない場合には、右のような第三者に対する対抗問題を生ずる虞はなく、また時効制度が本来、現在まで永く続いた事実状態を保護するための制度であることからみても、他に支障を生じない限り、時効期間を問題となつた現在から遡つて計算することは制度の趣旨に合致するものというべきであるから、前述の対抗問題を生ずる虞のない右場合に限つて、時効援用者に起算点の任意選択を許しても差支えないと解すべきである。ところで、成立に争いのない甲第一号証によれば、昭和二二年以降現在に至るまで本件土地の登記名義人は被告であつて、登記名義に変更のないことが認らられるから、原告が本訴提起の日である昭和四一年六月一五日から一〇年前である昭和三一年六月一五日を時効期間の起算点と定めそれを主張することは許されるというべきである。(渡辺剛男)

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